気孔を見て植物を問診??気孔を観察してわかることとは?

2025/02/19

植物の健康状態を知る方法はさまざまですが、その中でも気孔の開閉を観察することは、光合成や水分管理の指標として重要です。気孔は、二酸化炭素の取り込みや水蒸気の放出を調節し、植物の成長や生育に大きな影響を与えます。

そんな中Stomata Scopeは、植物の気孔をリアルタイムで観察できる技術で、農業や研究分野での活用が期待されています。本記事では、気孔とは何か、気孔を観察すると何が分かるのか、そしてStomata Scopeの活用事例について解説します。

そもそも気孔とは?

気孔は、植物の葉や茎にある微小な孔で、主に二酸化炭素の取り込みと水蒸気の放出を調節する役割を担っています。葉の表皮細胞に存在する孔辺細胞(こうへんさいぼう)が開閉することで、気孔の大きさが変わります。

  • 気孔が開くと… 二酸化炭素を取り込み、光合成が活発に。ただし水分も蒸散するため、乾燥リスクが高まる。
  • 気孔が閉じると… 水分の蒸散が抑えられるが、光合成が制限される。

このように、気孔は植物の生理機能にとって重要な働きを担っており、環境条件(光・温度・湿度)や植物の状態によって開閉のタイミングが変わります。
(参考:葉の気孔の「開く・閉じる」を科学する)

気孔を見る方法

そんな気孔の一般的な観察方法としては、顕微鏡を用いて観察します。大きく分けて、表皮を剥がして直接観察する方法と、レプリカをとって間接的に観察する方法の二つがあります。

① 表皮を剥いで直接観察する方法

この方法では、葉の表皮を慎重に剥がし、スライドガラスの上に置いて観察します。特にムラサキツユクサのような表皮が剥がしやすい植物では、この方法が容易に実施できますが、表皮が厚い植物や剥がれにくい葉を持つ植物には不向きな場合があります。
(参考:気孔を分類しよう)

② レプリカ法(スンプ法)による観察

レプリカ法(スンプ法)を用いることで気孔の形状を間接的に観察することが可能です。この方法では、葉の表面に水絆創膏やセメダインなどの材料を塗布し、乾燥後に剥がしてレプリカ(鋳型)を作成します。このレプリカをスライドガラスに載せ、顕微鏡で観察することで、植物の気孔の配置や開閉状態を把握することができます。

レプリカ法は、植物の種類を問わず、切片を作る必要がなく手軽に実施できる点が利点です。また、生きた状態の気孔をそのまま再現できるため、観察時の気孔の開閉状態を把握することができます。ただし、細胞の内部構造を観察することはできないため、特定の細胞小器官を染色して詳細に解析するには不向きです。
(参考:レプリカ法による気孔の観察)

さらに詳細な観察を行いたい場合には、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用する方法もあります。この方法では、気孔の立体構造を高倍率で詳細に観察することが可能です。ただし、試料の前処理に時間がかかるほか、装置が高価であるため、一般的な農業用途や簡易的な研究には適していません。

気孔を観察すると何がわかるのか?

気孔を観察することで、植物の健康状態や環境への適応力を測ることができます。特に以下の点が明らかになります。

水ストレスの診断

乾燥状態にある植物は、水分を失わないように気孔を閉じる傾向があります。気孔の閉鎖率が高い場合、乾燥ストレスを受けている可能性があるため、適切な潅水管理が必要になります。
(参考:水分ストレス-ルーラル電子図書館―農業技術事典 NAROPEDIA)

光合成の効率の予測

気孔が十分に開いていれば、二酸化炭素の取り込みがスムーズになり、光合成効率が向上します。逆に、気孔が閉じている場合、光合成が抑制されている可能性があり、生育不良の原因となることもあります。
(参考:気孔開度制御による植物の光合成活性と生産量の促進)

環境適応の指標

気孔の開閉パターンを調べることで、作物がどれだけ環境に適応しているかを知ることができます。例えば、高温・乾燥環境では気孔が早く閉じる植物もあり、耐性品種の選定にも活用されます。
(参考:C4植物の光合成能力と環境適応力はC3植物よりも進化的に優れている)

病害ストレスの検知

病気にかかった植物は、気孔の開閉に異常が生じることがあります。特定の病原菌は、気孔の閉鎖を妨げたり、逆に異常に閉じさせたりする作用を持っているため、気孔観察は病害診断の一助になります。
(参考:Controlling stomatal aperture, a potential strategy for managing plant bacterial disease)

Happy Qualityの取り組み

Happy Qualityでは、気孔を切り取らずにその場で観察できる世界初となるデバイス・Stomata Scopeを開発しました。現在、農業法人や大学などの研究機関などで導入が進んでおり、Happy Qualityでは気孔の開閉データを活用した栽培環境の最適化を目指し、Stomata Scopeを活用した研究・開発を進めています。植物の水ストレスや成長状態をより正確に把握することで、収量増加などにも寄与することができます。
また、実際にHapitomaの糖度を高めるための栽培ノウハウは、このStomata Scopeを使ったデータが生かされています。

Stomata Scopeの特徴

  • 非破壊測定が可能 → 植物を傷つけずに気孔の開閉をリアルタイムで測定。
  • AIを活用した検出 → AIを活用し、気孔の数や場所、気孔の開度の自動計測が可能に。
  • その場での測定が可能→ 手軽に持ち運びができるデバイスのため、様々な環境で栽培されている植物の気孔を繰り返し観察することができる。

現在、AIの検出モデルを12種類までに拡大させ、解析対象となる品目の拡充を進めています。

Stomata Scopeの活用事例

実際にStomata Scopeを導入していただいている企業や大学での活用事例は以下の通りです

  • 栽培現場における環境制御の指標の1つとしての気孔観察
  • 植物工場でのチップバーン抑制のための指標として
  • 薬剤・化合物の評価指標
  • 各品種間の耐性試験の指標

Stomata Scopeに関するさらなる情報や導入については、ぜひ以下のリンクをご覧ください。
詳細はこちら:Stomata Scopeについて

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